斜面崩壊のリスク評価

 前回の記事では、斜面の崩壊確率を求めました。地盤強度のバラつきから確率計算を行うというものです。
 本記事は、そうして求めた斜面の崩壊確率をどう使うか、という話しです。これは”信頼性設計”という考え方に基づきます。

 一般に、リスクの大きさは以下で表されます。


 住宅で起こる斜面崩壊を想定します。
 斜面崩壊による影響の大きさを住宅の損害額として、それに発生確率をかけることで、リスクの大きさを金額で評価することができます。
 例えば、住宅の損害額を500万円とし、豪雨時の斜面の崩壊確率を20%(安全率=1.05程度)とすると、リスクの大きさを金額として以下のように算出できます。

リスクの大きさ= 500万円 × 20%/100 = 100万円

 このリスクの大きさである100万円を如何に評価し対応するか、です。
 この斜面の崩壊対策を、90万円の費用でできるとしたら、リスクの大きさ100万円に対して崩壊対策を行うことは、経済的にメリットがあると判断できます。
 もちろん、このリスクを許容して現状維持を選択することも、一つの判断です。

 別のケースとして、住宅の損害額は同程度で、豪雨時の斜面の崩壊確率が2%(安全率=1.4程度)だとします。するとリスクの大きさは以下になります。

リスクの大きさ= 500万円 × 2%/100 = 10万円

 この程度なら崩壊対策はせずに、現状維持でいこうかとなります。
 ここで注意しなければならないのは、どこまでいってもどこかにリスクは残るということです。あらゆるリスクを完全に排除することは難しいので、ここまでは許容できるという所で線引きをすることになります。リスクを金額で評価することは、線引きのための判断基準に役立ちます。

 以上の一連の流れは、リスクアセスメントと見ることができます。
 これまで紹介してきた土検棒による土層強度測定順算による安定計算崩壊確率の算出は、リスクを評価するためのデータ収集であったとも言えます。

 このように斜面崩壊は、調査解析の結果から、対策するかどうかを合理的に決定することができます。