「急傾斜地」での安定計算

 「急傾斜地の土砂災害警戒区域」があったとして、その場所の危険度はどのくらいでしょうか?
 今すぐにも崩れてしまうのか、今は大丈夫だけど雨が降れば危ないのか、、。
 そうしたときに、斜面の危険度を評価する手法として“安定計算”というものがあります。
 安定計算とは簡単に言うと、物体が破壊する瞬間のつり合いの計算で、外力が物体の強度を上回れば破壊してしまいます。

 上図は安定計算の概念図です。
 計算結果は安全率:Fs として得られ、Fs は抵抗力/滑動力で表されます。
 抵抗力:S 土の強度で、滑動力:T土の自重地下水圧ということになります。
 滑動力が抵抗力より大きくなるとき、即ち安全率:Fs が1より小さくなったときに斜面は崩れます

 安定計算をしてみると、現状の斜面のほとんどはFs が1以上となります。これは当然で、Fs が1より小さい斜面は崩れてしまうので、そもそも存在することができません
 降雨や地震といった状況を想定して、どういう条件でFs が1より小さくなるのか、計算条件を変えて探っていきます。
 以下に安定計算結果の一例を示します。この例だと地震と降雨を組み合わせた条件でFs が1より小さくなる(崩壊する)ということが分かりました。



 このように安定計算で分かるのはどういう条件のときに斜面が崩れるのかということです。ある条件で斜面が崩れるということが分かっていれば、そういった事態に対して事前に備えておくことができます。
 現状で問題ないからといって見過ごしがちですが、こういった調査をしておくことが、大事な資産や大切な人の命を守ることにつながります