土石流は“逃げる”しかない

 下掲の写真は、熱海市伊豆山地区で発生した土石流の被災状況です。ANNnewsよりテレビ朝日撮影のものです。

 写真を見ると、土石流の流路沿いの家屋がなぎ倒されています。無惨としか言いようがないです。

 テレビやネットで土石流が流下していく様子を目にされた方も多いと思いますが、土石流とは土砂と水が混合したものが、流路の岩や木を取り込みながら、谷沿いを流れ下っていく現象です。土砂を含んだ流れであることから密度が高く、直進性があり打撃力をもつという特徴があります。

 土石流への対策として最も一般的なのは、砂防ダムで流れをせき止めるというものです。いわゆるハード対策で、問題点としてよく言われるように、時間とコストがかかってしまうために対策するまでの間、被害をくい止めることができません。
 そうすると有効な対策方法として、以下が考えられます。
・土石流がくる恐れのある場所には住まない。
・仮にそういう場所に住んでいるとしたら、その場所のリスクについて理解しておく。
・土石流がくる恐れのある場所にいて、警報が出たなら、少しでも早く高い場所に避難する。

 そもそもなぜそのような危険がある場所に家屋が建てられるのか?、ということに疑問がわきますが、一因として考えられるのは、土石流の発生頻度が人の一生より十分長い(100~200年くらい?)ということです。
 ニュースを見ていると何年かに一回は土石流のひどい被害が出ているように思われるかもしれませんが、これは無数にある危険な場所のごく一部です。ひとつの場所だけ見ると、危険性があっても運が良ければ遭遇しないという程度だと思います。
 
 行政の対応として、土砂災害警戒区域の指定で住民へ注意は促されています。レッドやイエローの区分がありますが、土石流についてはイエローであっても相当の被害が出ているので、あまり関係がないようにみえます。

 上述のように土石流については、発生をくい止めるようなハード対策で対応しきれていない部分があります。また、いったん発生してしまうと収まるまで待つしかなく、逃げることしかできません。そうした事態を避けるには、そもそも土石流がくる恐れのある場所には住まない、という必要があります。

 日本全土でみれば発生頻度が低いために、見落とされがち、軽視されがちな土砂災害ですが、危険性のある場所は積極的に避ける(逃げておく)姿勢が大事ではないかと思います。