豪雨が原因であることは明確なものの、そこから崩壊に至る過程については、未だはっきりしていない問題であると思います。諸説あるところですが、以下、表層崩壊の発生原因について、筆者の考えを述べたいと思います。
近年、大雨警報発令の基準になるものとして、“土壌雨量指数”と“履歴順位1位”の考え方があります。降雨から土の中の水分量を推定した指数と、その場所で過去に降った雨の中で上位の指数になるかを見て、土砂災害の危険度を判定しています。
このように、豪雨が表層崩壊のトリガーになっていることは、まず疑いようのない事実です。
ここから道が二つに分かれます。
① 降雨による地下水で土が飽和状態になり、強度が低下し崩壊に至る。
➁ 斜面上部から水圧(過剰間隙水圧)がかかり崩壊に至る。
よく言われるのは、①のように思われますが、本当にそうだろうか?というのが筆者の意見です。
下の写真は、平成30年豪雨で発生した表層崩壊の跡です。
これを見ると崩壊の中心に大きな穴がぽっかりと開いています。こういった崩壊面に生じた穴は、災害現場でよく見られますし、崩れて間もないと水が出たりしています。
これはいわゆる“水みち”ではないでしょうか。
また、表層崩壊の発生時に、度々目撃されるものとして“水柱”があります。斜面が崩れる直前に水柱が上がる、というものです。
以上のような状況証拠を見ていくと、水圧が表層崩壊の原因なのでは?となるわけです。
①の土の強度低下で、崩壊面の穴や水柱ができることの説明がつくでしょうか。上写真にある土が吹き飛んだような崩壊跡になるでしょうか。
飽和状態の土が崩れるのなら、雨のたびに土の強度はどんどん小さくなる? 豪雨のときだけ崩れることを説明できる?
土質力学的な考えに縛られ過ぎてないでしょうか。実現象からみた原因は何でしょうか?
筆者は、➁の過剰間隙水圧と呼ばれる地下水圧がかかることで、表層崩壊が発生するものと考えています。イメージとしては、水風船がふくれて破裂するのに近いです。
この考えを推し進めていくと、“排水補強パイプ”のような地下水排除工が表層崩壊対策に有効であることが分かってきます。
とはいえ、土の強度低下から考えても、地下水が作用するのは過剰間隙水圧と同じなので、地下水排除工の重要性は変わりません。行きつく所は結局、同じです。